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2026-35 生豆の品質低下の要因 その1

2026年07月24日 19:04

生豆の品質は、10~15年前と比べて全体的に低下しているように感じます。
その背景には、気候変動、品種構成、栽培管理、精製・乾燥、選別、物流、さらには評価基準の変化など、複数の要因が関係していると考えられます。

気候変動と密度の低下
標高の高い産地では、一般に気温が低いため、コーヒーチェリーの成熟期間が長くなります。
成熟期間が長いことで種子の充実が進み、重量や密度の高い生豆が形成される傾向があります。
しかし近年は、気候変動に伴う気温、特に夜間気温の上昇によって果実の成熟が早まり、種子の充実期間が短くなる可能性が指摘されています。
このことが、生豆の大きさ、重量、かさ密度および品質に影響を及ぼしていると考えられます。

Craparo et al.(2021)は、タンザニアのアラビカ種を対象に、夜間気温の上昇が果実の成熟を促進し、収穫時期を早めることを示しています。Craparo, A.C.W. et al. (2021). “Warm nights drive Coffea arabica ripening in Tanzania.” International Journal of Biometeorology, 65, 181–192.


Bote and Vos(2017)は、エチオピアのアラビカ種を調査し、高標高条件が豆の大きさと重量、さらにカップ品質を向上させることを報告しています。
Bote, A.D. & Vos, J. (2017). “Tree management and environmental conditions affect coffee berry development and bean quality.” NJAS: Wageningen Journal of Life Sciences, 83, 39–46.


種子内部では、植物の成長や生命維持に直接必要なショ糖をはじめとする風味の前駆体となる脂質、タンパク質・アミノ酸、有機酸の蓄積が進みます。これらの成分は、エネルギー生産、細胞形成、種子への養分蓄積などに直接使われますので重要です。
また、成熟期間が長い豆ほど、カフェイン、トリゴネリン、クロロゲン酸類なども形成されます。
これらは、焙煎後の風味形成に影響をおよぼす成分として重要です。しかし、高温によって果実の成熟が早まると、成分形成の可能性が低下すると考えられます。
このことから、かつてのケニアのSL品種やグァテマラ・アンティグアのブルボン品種に見られたような、成分が十分に形成された生豆が得られにくくなっている可能性が考えられます。

また、降雨量や降雨時期の不安定化により、花芽の休眠解除と開花のタイミングがそろわず、複数回に分かれて開花する傾向も生じています。
その結果、結実時期やチェリーの成熟度にばらつきが生じ、収穫時に異なる成熟段階のチェリーが混在しやすくなります。
さらに、果実の膨大期や種子の充実期に水分不足や高温が重なると、豆重量、粒径、健全豆率などの物理的品質が低下する可能性があります。
こうした豆の充実度と成熟度のばらつきが、ロット全体のかさ密度低下の一因になっていると考えられます。
密度、粒径、水分量および内部構造にばらつきのある生豆では、焙煎中の熱移動と水分蒸発の速度が豆ごとに異なります。


焙煎中のクラック(ハゼ)は、水蒸気や二酸化炭素による内部圧力と豆組織の強度との関係によって生じるため、水分状態や組織構造が不均一な場合には、クラックのタイミングも分散すると考えられます。
その結果、同一ロット内で焙煎反応の進行度に差が生じ、風味の均一性や明瞭さが低下する可能性が考えられます。
ただし、10年前にはこのような状況を想定していなかったため、当研究所では継続的な活性水分やかさ密度測定を行ってきませんでした。
そのため、過去と現在の物理的特性を直接比較できるデータはありません。

こんなことを書きながら「厄介で難しいテーマ」に取り組んでしまったと反省しています。
しかし、今後スペシャルティコーヒーをどのように理解すればよいのかを考える上で重要です。

このテーマはかなり長くなりそうですので何回かに分けて発信します。

Horiguchi