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2026-37 パナマのゲイシャ品種・ナチュラル

2026年08月23日 17:30

パナマの農園主がゲイシャをナチュラル精製にし始めた最大の理由は、ゲイシャの新しい風味をつくり、高価格で販売できる可能性があったためと推測します。

2004年にエスメラルダ農園のウォッシュト・ゲイシャが評価された当初、その価値は柑橘果実、紅茶のような香りと透明感にありました。その後、需要と落札価格が上昇すると、多くの農園は区画分けを進めるとともに、2010年頃からナチュラルなどの精製実験を始めました。
エスメラルダ農園自身も、2004年以降、オークション価格の上昇とともにナチュラル精製への需要が高まったと説明しています。

主な理由は次の4点です。
1)甘味と果実香を強めやすい
果肉を付けたまま乾燥させることで、完熟果実、ベリー、ワイン様などの香りが加わり、ウォッシュトよりも強く印象に残る風味になります。特に競技会では、華やかで強度の高い香りが高得点につながりやすくなりました。
2)同じゲイシャを別の商品として販売できる
一つの農園でも、ウォッシュトは「花・柑橘・透明感」、ナチュラルは「果実・甘味・ボディ」というように商品を分けられます。少量生産のゲイシャをさらに細分化し、希少なマイクロロットとして販売できるようになりました。
3)Best of Panamaの独立部門と高価格
Best of Panamaでは2010年代半ばには「Geisha Washed」と「Geisha Natural」が別部門になり、ナチュラルでも優勝を狙える環境が整いました。2017年にはナチュラル・ゲイシャが1ポンド601ドル、2018年にはElida Estateが803ドル、2019年には1,029ドルという記録的価格をつけ、他農園も追随しました。これに比べると現在は極端に異常な価格です。
4)アジア市場や競技会で好まれた
価格の意上昇に伴い、花の繊細さだけでなく、強い果実香、甘味、発酵由来の個性的な香りを求める買い手が増えました。とくに高価格帯では、繊細さよりも「一口で分かる強い個性」が商品価値になりやすかったと考えられます。

しかし、ナチュラル精製がウォッシュトより品質的に優れているとは限りません。過度な発酵によって、ゲイシャ本来の品種特性や産地特性が覆われることがあります。

ゲイシャ本来の風味を高めるというより、果実香を強調して競技会で目立たせ、商品を差別化し、より高い価格で販売するために広がったと考えます。希少性でゲイシャ品種の認知度が高まり、いつの間にかゲイシャが最高峰のコーヒーとして一部に認識されるようになったというのが実態に近いでしょう。

ウォッシュトは「品種とテロワールの評価」、ナチュラルは次第に「精製による風味創出」という側面が強くなっていったと感じます。ウォッシュトを評価する人そのものが減ったというより、ナチュラルや特殊精製を支持する声の方が市場で目立つようになったと見るべきでしょう。

現在のコーヒー市場では、品種やテロワールの繊細な違いよりも、ベリー、トロピカルフルーツ、ワイン様など、分かりやすく強い香味が評価されやすくなっています。

しかし、ゲイシャの本質を評価するなら、ウォッシュトは品種、栽培環境、完熟度、精製技術の精度が見えやすいといえます。ナチュラルは、甘味や果実香は強くなりますが、果肉発酵由来の風味が重なりやすいため、基本はウォッシュトの豆と考えます。

私は精製によって付加された強い香味よりも、品種と栽培環境に由来する風味を重視します。そのため、ゲイシャの本質はウォッシュトに最も明確に現れると考えています。基準となるウォッシュトがなければ、ナチュラルによって何が変化したのかも判断できません。このことをコーヒー関係者は理解すべきでしょう。